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ぐるぐると考えていると、真島に名前を呼ばれる。慌てて顔を上げると、この上ないやさしい微笑でみつめられている。
もう、すべて見透かされているようだ。
「服を捨てなかったのは、単に捨て方がわからなかったからだ。ボタンやら、金具やらがついてるだろ? 調べんのも億劫だし」
「そう、だったんですか……」
「そういう相手は長らくいねえよ」
ほっとして力が抜けてしまったところに、またぎゅうっと抱き込まれる。
「それはお前の独占欲か?」
「えっ?」
「だったらうれしいぜ」
「そう、かもしれません……」
「そんな気持ちを向けられたら、ますますかわいくなっちまうだろうが」
髪や耳、頬にキスを落としながらこの上なく優しい視線で僕をみつめる。
真島は随分と、甘やかし上手なようだ。
「クロが男だってのは、わかってんだけどな……お前のことがかわいくて仕方ないんだよ」
「うそ……だ」
「嘘じゃねーよ。いつも一生懸命で、真面目で……お前といると、毎日がすごく穏やかで心地いい」
顔をのぞきこみ、額をすり付けるように近づくとちゅっと口づけられた。
「クロと出会って、俺は自分が寂しかった事を思いだしちまったんだ」
「真島、さん……」
「もう……ひとりでいたくない。お前のせいだよ」
掠れた声で囁かれ、自分を乞われていることの戸惑いと歓びが体を駆け巡る。
真島の視線が再び熱を持った。僕の全部を真島にゆだねたい。
逃したくない存在を確かめるように、きつく腕を回した。
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