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ぶあつい遮光カーテンは、外が昼なのか夜なのかすらわからなくて、再びドアが開いたことで、夜になったことを知る。
「ああ……まだ何も口にしないのだね」
部屋に入ってきた御主人様は悲しそうな声音で訴えるが、その様子はどこか芝居がかっていて気分がささくれ立つ。
「あの男は、もうお前のことを待ってはいないよ」
反抗的な態度ばかり取る僕に、御主人様もイラついているようだ。急に勝ち誇ったような顔をして言い放った。
「あの男、とは」
「とぼけたって無駄だ。お前を拾った男のことだよ。ダンプトラックの運転手……調べはついている。お前が私の元に戻る方が幸せなのだと、理解しているよ、彼は」
「……そんなわけないです」
「違わない。だってやっぱり私に飼われているほうが幸せだと、お前が言ったのだから」
「そんなこと……言っていません」
「だが、あの男はそう思っているだろうね」
なんて卑劣なのだと思った。嘘をつくような真似をして、なぜここまで執着されるのだろう。そもそも、僕を捨てたのは御主人様本人なのに。
「あれから、お前の代わりを見つけようとしたが、どの子もいまいちなんだ。お前ほどの子は、いない」
「そうでしょうね」
意外な言葉だったのか、御主人様が目を瞬かせた。
「僕は完全にあなたの思う通りの人形でしたから。さぞかし扱いやすかっただろうと思います」
「お前……そんな口のきき方……」
「それでも、感謝はしていますよ。僕のことを捨てたけど、調教済みの奴隷として人に譲ったりはしなかったから」
「……こんな子は、私の作品じゃない……おかしい、治さねば」
僕の声が聞こえているのかいないのか、御主人様はブツブツと独り言を言い始めた。
完全に目が据わっていて、落ち着きなく部屋を出ていってしまった。
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