ダンプとカラス

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「真島さん……」 「クロか……どうした、そのカッコ」  秋も終わりかけの寒空の下、夏物でがちがちと震えながら帰って来た僕に、真島は目を丸くして驚いていた。 「これしか……なかったもので」 「…………そうか」  おそるおそる、真島に近づき、回り切らない短い腕を伸ばして抱きしめた。緊張で少し震えるが、真島の匂いにとても安心する。  ひとしきり抱き合った後、口づけられてほおっとため息が漏れた。真島は僕のあざだらけの手首を見て悲痛な顔をし、頬を寄せた。 「おかえり……大丈夫だったのか?」 「はい」 「……」 「ごめんなさい……嘘です。ちょっと軟禁されてました」  真島がぎゅうっと抱きしめてくる。その大きな体も震えていた。よく見ると、ガタイの良かった体が少しやつれている。 「真島さんのところに戻りたくても、戻れなかったんです」 「そうか、やっぱりあれは嘘だったんだな」  御主人様がなりふり構わずついた嘘は、本気とはとられなかったにしてもきっと真島を傷つけた。 「すみませんでした」 「いいや、こっちこそごめんな、クロ。携帯を持たせればよかったとか、マンションの場所をきちんと聞いておけばよかったとか。信じて待ってるなんて、キレイごと言ってた自分の馬鹿さ加減を呪ったよ」 「真島さん……心配かけてごめんなさい」 「大丈夫か? 病院とか連れて行った方がいいか?」 「軟禁されていた他は、特に何もされていないから大丈夫です。真島さんこそ、やつれてしまいましたね……」
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