263人が本棚に入れています
本棚に追加
/51ページ
僕の様子がわからなくて、どれほど心配をしてくれたのだろう。そっと手に触れると、ぎゅっと力強く握り返してくれた。
「ずっと、真島さんのことを考えていました――会いたかったです」
想いを伝えると、自然と涙がこぼれた。真島がわしわしと頭を撫でて、涙を拭ってくれた。
「俺は、ずっと後悔してた。なんできちんと好きだって伝えなかったんだろうって。例えクロがあの男の元へ戻るようなことになったとしても、自分の気持ちは伝えておくべきだったと、何度も思った」
「僕もずっと、真島さんに好きだって言いたかったです……真島さん?」
「ん……」
「名前も、取り返してきました……名前は、烏山大我です」
「大我……か。男らしい、いい名前だ。だったら、クロはもう失礼だな」
「そんなことないです……烏山だから、クロって呼ばれたときにカラスのクロだって思いましたよ。なんてピッタリなんだろうって」
せっかく真島が涙を拭ってくれても、あとからあとから溢れてしまってしまいには泣き笑いになった。
「これからも真島さんさえよかったら、クロって呼んで下さい」
「いいのか?」
「はい……真島さんにクロと呼ばれて暮らしていた時、毎日が優しくて、暖かくて、くすぐったくて……とても幸せでした。あなたの口にするものはすべて僕がこしらえたもので、それをおいしそうに食べてくれて。うれしかった」
もう、離れたくない。真島の胸に縋りついた。
「これからもあなたのそばにいてもいいですか?」
「いてくれ……俺がお前にいて欲しいんだ、クロ――好きだ」
最初のコメントを投稿しよう!