ダンプとカラス

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「ただいま戻りました」  書店でのバイトを終え、真島と共に暮らすマンションに帰る。 「おう! おかえり」  今日、早出だった真島はすでに帰宅しているようだ。風呂を終えてビール片手にくつろいでいる。 「お腹すきましたよね。今すぐごはんを作りますから」 「そんなに無理すんなよ」  口ではそんな風に言っているが、真島は僕の作るご飯が好きで、楽しみにしてくれているのを知っている。そしてそのことがとても嬉しい。  それに真島をあまり待たせないよう、学校に行く前に下ごしらえをしていくので、それほど手間ではない。 「はい……少し待っててくださいね」  真島のうれしそうな顔を見ると、体温がぐっと上がる気がする。この顔を見ていられる為なら、大変なことなんてないなあと感じてしまう。  なんてことない毎日の食事。今日は赤魚の干物に白和え、卵焼きと野菜たっぷりのみそ汁、ふたりとも魚好きなので自然と和食中心になった。真島は「うちで魚が食べられるなんて!」ととても喜んでくれる。  食事を終えて風呂に入り、ソファに並んで座る。 「なあクロ」 「はい」 「バイトばっかりで大変じゃないか?」 「そんなに詰め込んでいないし、大丈夫ですよ」 「それならよかった。大変なことがあったら、ちゃんと言ってくれよ。俺も協力するから」  真っ赤になってそんな言葉を掛けてくれる。僕はとても嬉しくなった。 「はい、ありがとうございます」 「そっか……俺、風呂行ってくるわ」  帰ってきた時、風呂上りではなかったかなぁと思ったが、もともとキレイ好きなのでそれほど気にしていなかった。
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