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ダンプトラックという乗り物に初めて乗っている。
地上からすごく離れていて、周りの車をみんな見下ろすから、なんだか大きな人になったような優越感が湧く。
運転席の男性は、面倒なことにかかわってしまったという悔恨と戸惑い、みたいな感情がないまぜになったような表情でこの大きな車を転がしている。
怒り、の表情は今のところ見えなくて少しだけほっとした。
僕はといえば素肌に直接Tシャツと短パンを穿いて、作業着を羽織っている。足は裸足。すべて運転している男の物だ。着替えの類はこのダンプトラックに常備しているらしい。
男は真島と名乗った。年は四十過ぎくらいだろうか。二十一歳の自分よりは、相当年上だと思うが、それ以外はよくわからない。
僕はこの人に殺されるところだった。
正確に言えば、僕自身には全くその自覚はなかったけれど、真島がそう言っていた。
真島がコンクリートガラというコンクリートの大きな欠片をダンプトラックいっぱいに積んで、僕が拾われたガラ置き場に来たとき、すでに辺りは薄暗くなっていたという。
予定ではガラ置き場の社長がいるうちに到着する予定だったそうだが、事故渋滞の為、真島が到着した時はすでに工場は無人で、荷台に積んだコンクリートガラを指定の場所に下ろすため、荷台を傾けた時、異変に気付いたそうだ。
ミラーにちらっと移った白と赤――それが僕だった。
真島がそれを確認しなかったら、何トンものコンクリートの欠片に潰されて、僕は命を落としていただろう。
今真島が僕を助手席に乗せて走っているのはその、殺してしまったかもしれないという罪悪感があるからだろうと思う。でも真島がそんなものを感じる必要なんてない。
悪いのは僕。そして意識のない僕をそこに放置した僕の御主人様なのだから。
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