ダンプとカラス

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「もうすぐ会社に着くからな。もうほとんど人もいねーと思うが、見られないようにしてオレの車に移動しろよ」 「……はい」  僕の御主人様は、とても厳しい人だ。自分から御主人様に問いかけることはできないし、許可が下りるまで、その命令は絶対だ。  放置プレイは今までにもあって、山中に一日半ほど置いておかれたこともあった。今日もそうだが放置される時は、裸で手首と足首を赤い紐でくくられる。  だが、意識のない時に放置されたことは今までなかった。真島から見たら僕はうすらぼんやりとしているとしか見えないだろうけど、実は先程から僕はすごく動揺している。  御主人様に許可なく、放置されていた場所を離れた。  御主人様に許可なく、他人と口をきいた。  そんなことは初めてのことだった。御主人様の下僕にして頂いてから三年。僕は御主人様以外の人とは口をきいたこともなかったし、そもそも顔を合わせる機会もなかった。  だが僕にはもう、御主人様の下僕でいる資格はないのだ。  御主人様に一目会って、下僕でいながらしでかしてしまった不備を詫びたかった。死ねと言われればその場で死ぬ覚悟も出来ている。  それでも、いくら広大な土地で人が少ない場所とはいえ、日に何台もトラックが行き来するあのガラ置き場で、赤い紐のみを纏った全裸で立っているわけにいかないのは、さすがの僕にもわかる。  
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