ダンプとカラス

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 それきり真島は、ほとんどしゃべらずにもくもくとチャーハンを掻きこんでいる。一緒に作った卵スープをたまに飲んで、またチャーハンを食べる。  その食べっぷりを見てもっと沢山作ればよかったかなと思った。  御主人様と僕は、精神的には二十四時間主従関係にあったが、だからといってずっとSM的なプレイをしていたわけではない。御主人様が仕事に出ている間は、うちの中の家事全般を行っていた。  特に食事にはうるさいのでテレビやネットでいろいろ調べて、工夫していた。  朝食は毎朝決まったメニュー。夕食は御主人様が出て行くときに告げられたメニューを、御主人様の帰り時間に合わせて作り、出来立てを配膳する。材料は御主人様が用意した。  食事の出来が悪いと注意を受けたが、出来栄えを褒められたことはなかった。 「しかし、あんなところに裸で転がってるからほんと、びっくりしたぜ。死体かと思った」  御主人様からは首輪以外、身に着けることを許されていなかった。  だから真島に見つけられた時も、はじめは恥ずかしいという気持ちが希薄だった。真島の驚きぶりを見てじわじわとその異常な状況を意識した。 「あの、本当に……助かりました。ありがとうございます」  頭を下げた。真島に突っぱねられたら今頃どうなっていただろう。警察に突き出されるか、あのまま圧死か凍死するか。いずれにしてもあまりいい未来は描けなかった。  まあ、だからといってこれからの僕の未来もそう変わらないだろうけど。  それにしても、こんなにいろんなことを考えたのは久しぶりだった。思考というのは人を疲労させるのか、久しぶりに食べ物を腹に入れると、途端に眠気が襲ってきた。
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