268人が本棚に入れています
本棚に追加
「そんなことが、あったんですか」
「私から聞いたことを、彼女に告げていただいて結構です。
後はお二人の今後についてお考えになったほうがいいかと思います」
淡々とした口調から事務的に紡ぎ出された真実を残し、東雲は部屋を出ていった。
東雲の口から、舞と阿部とのことを、告げられた。
そのあと、どうやって
事務所の自分のデスクへと戻ったのかも、覚えていなかった。
このあと、
杉田との食事の予定が入っていたが断りを告げる。
そんな気分になどなれない。
阿部にされたことを、彼女の口から何も聞かされてなかった。
彼女も俺が知ることを望んではいなかっただろう。
日本で阿部にストーキングをされているという事実を、
彼女は一切匂わせなかった。
俺のことばかりを心配し、
いつも笑って頑張ってと応援してくれていた。
笑いながら、心の中でいつも泣くことができる女だと、
わかっていたのに気付けなかった俺は、
一体、彼女の何を見ていたのだろう。
最初のコメントを投稿しよう!