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その子は少し水を飲んだらしく、具合悪そうに木にもたれながら、水を吸ってしまった着物や髪をしぼった。
滴る雫が日光によりひかり、その姿は誰もが見とれてしまうほど美しかった。
僕も少しの間、目をそらすことができなかった。
しかし我にかえると、ソッと彼女に近づき後ろから自分の羽織をかけて、何もいうことなくその場を去った。
「ぁ...」
少女はお礼を言いそびれ、肩にかかった羽織をただ握りしめた。
「ありゃ、新撰組の沖田だな」
「新撰組?」
「あんた知らないのかい。このまちじゃ有名な人斬り集団だ。今の男は、幹部の沖田総司っていう最低な男さ」
「沖田....総司..」
繰返し名を呟く少女は、彼が歩いていった道を見つめた。
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