第2章―4

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 もっと青春しなさいよ。そう思ってから、頭の中で否定する。文子が青春してるから、今、こうして苦労しているのだ。  みゆきはチラリと教室に時計に目をやった。クラスごとで少々時間が異なるものの、ホームルームが終わってから概ね5分強から10分弱といったところだろう。今から追いかければ、もしかしたら上原怜央に追いつけるかもしれない。  でもそれは同時に文子と会うことになりはしないか。一瞬、そう頭の中で考える。でも、文子の家の住所は大体知っている。彼女が自転車で登下校していることも。だから、文子の帰宅する道のりは大体分かっているのだ。その方角さえ避ければ良い。避けて、もし上原に会えるのであれば、きっとミッションは成功する。 「彼って、自転車? 電車? それとも徒歩?」  通学の手段は浮かぶだけ並べたてる。自転車なら今から追いつくのは難しいが、徒歩だったら追いつける可能性もないことはない。電車なら今から駅へ向かうだけ。
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