俺、超能力者なんだ

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「俺、実は超能力者なんだ」 「は?」  私は即行でカレンダーを確認した4月1日(エイプリルフール)ではない。 「何言ってんの?」  彼はいつも口数の少ない、けれど優しい人だ。冗談なんてほとんど言わないような人だった。 「俺、実はテレパシー使えるんだ」  普段、冗談を言わない彼が、沈鬱な表情と重苦しい雰囲気でそういうのだ。もしかしたら、という思いが心の中に芽生えた。 「急に言われても信じられないよな」 「と、当然よ。この科学の時代にそんなこと。ユウくんが冗談言うなんて珍しいね」 「冗談じゃ、ないんだ」  ユウくんはそう言うと、トランプはないかと私に聞いた。  私は使い古して角がボロボロになってしまっているトランプをユウくんに渡した。  ユウくんはトランプをシャッフルすると、この中から一枚選んで、とトランプを私に差し出した。 「じゃあ、これ」 「そのカードは俺に見せないでね。で、そのカードが何だったか俺に念じてほしいんだ」  そうユウくんが言うので、私は引いたカードを自分の胸元に押し付けた。そして目をぎゅっと瞑って、ハートの6、ハートの6と念じる。 「ハートの6、だね」  私が念じていると彼がいきなりそう言った。私は驚いてぱっと瞼を開いた。  なんで!? まさか、本当にテレパシストなの!? 「も、もう1回。もう1回お願いっ」 「いいよ。じゃもう1回引いて」  はい、と彼はもう一度シャッフルしたトランプを差し出した。  その後、何回も何回もやったが、ユウくんは100発100中でカードを当てる。  すごい、彼は本当に超能力者なんだ!  ◇  俺の彼女はとても素直でかわいい。人を疑うことを知らないのかのようになんでも信じてしまう。眩しいほどに無垢で純粋だ。  今もほら、簡単な手品なのに超能力だと言ったらそう信じてしまった。  本当にかわいい。  あ、でも。急いで訂正しないと。彼女の友達に言いふらされたら非常に恥ずかしい。
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