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溢れ出る涙を拭うことなく無我夢中で走り続けて辿り着いた場所は──
「ここ、どこ?」
あたしの頭の中にある地図には載っていない見知らぬ土地だった。
キョロキョロと辺りを見回して町の名前が書いてあるものを探すけれど、何もない。
それにこんなときに限って、人一人通らない。
「どうしよう」
携帯を手にしてリダイアルを押そうとする寸前で指の動きが止まった。
あたしは誰にかけようとしていたの?
画面に写し出された名前は、今一番会いたくない人。
ついさっき浮気しているのを目の当たりにしたばかりなのに。
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