第1話 浮気

浮気

そのままとぼとぼと歩きながら、よく考えてみれば、こういうときに呼び出してきてくれるような人は、仁以外誰もいないことに気付いた。

といっても、ちゃんと親友はいる。

ただ車を持っていないし、なんといってもラブラブな彼氏といつも一緒にいるから、こんなことで呼び出したりなんてできるはずがなかった。

「はぁー」

無意識に溜め息を吐いたとき、オシャレな看板が目に飛び込んできた。

『カフェバー FLOWER RAIN』

「フラワー、レイン……花の雨？　……花吹雪のことかな？」

あたしの脳内にある辞書の数少ない単語を引っ張り出してきて直訳する。