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“彩葉?”
スリーコールで電話をとった仁の声は、普段通りに聴こえる。
もしかして、そこに女はいないの?
でもついさっき、女の誘いに『わかったよ』と言っていた仁。
普段通りに装っているだけなのかな。
「仁、このあと予定ある?」
そんな仁にそう訊いてみたけれど、どんな答えが返ってくるのか怖くて心臓がバクバクと激しく音をたてている。
そんなとき、ちょうど駐車場へ向かっている仁の後ろ姿が視界に飛び込んできた。
と同時に速足で歩いていた足を止めた。
“俺、このあとバイトなんだ”
「……」
今あたしの瞳に映し出されているのは、見間違えでなければさっきの女と寄り添いながら歩いている仁の姿。
これって、女の誘いに乗ったってことだよね?
嘘をつかれちゃったってことだよね?
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