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黒い服の一団
連休を利用しての帰省途中、黒い服を着た一団に遭った。
うつむいた一行が近所の家に入ってく。確か、あの家は寝たきりのおばあさんがいた筈だ。どうやら亡くなったらしい。
今時は、通夜も葬式も葬祭センターなどでするのが常だが、実家は田舎町だから、自宅で葬儀を行う家もあるのだろう。
となると、近所づきあいの一環で、母は手伝いに行っているのではないだろうか。
そんなことを考えながら家に入ると、帰省の連絡を入れていた母がすぐさま出迎えてくれた。
「あれ? 手伝い、行かなくていいの?」
「手伝い? 何の?」
普段着そのままの母に言うと不思議そうに聞き直される。それに、いましがた外で遭遇した一段のことを告げると、母はさも怪訝そうな顔をした。
「あそこのおばあさんなら、もう、半年以上も前に亡くなってるわよ。四十九日の法事もとっくに済んでるし、それ以外の法要とかもこの時期にはないわよ」
母はそう言った後、そもそもご近所で誰かが亡くなったら、すぐさま町内会からの報せが入るので、親戚などが支度を整えて訪ねてくる前に、近所の人間の方がよっぽど駆けつけ揃っているとも語ってくれた。
「でも、もうご近所にも連絡をしないような、七年とか十三年とかの法要なら、こっちが知らないだけであるかもしれないから、あんたが見たのはその人達かもね」
その説明にとりあえず納得し、私の意識から黒服の一団のことはこぼれ落ちた。…この時は。
* * *
二日後。ごろごろと帰省生活を満喫していると、母が慌ただしく箪笥をさばくり始めた。聞けば、近所の方が亡くなられたという報せが入ったのだという。
その近所の家は、私が先日、黒い服の一団が入って行くのを見かけた家だった。
* * *
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