黒い服の一団

1/2
前へ
/2ページ
次へ

黒い服の一団

 連休を利用しての帰省途中、黒い服を着た一団に遭った。  うつむいた一行が近所の家に入ってく。確か、あの家は寝たきりのおばあさんがいた筈だ。どうやら亡くなったらしい。  今時は、通夜も葬式も葬祭センターなどでするのが常だが、実家は田舎町だから、自宅で葬儀を行う家もあるのだろう。  となると、近所づきあいの一環で、母は手伝いに行っているのではないだろうか。  そんなことを考えながら家に入ると、帰省の連絡を入れていた母がすぐさま出迎えてくれた。 「あれ? 手伝い、行かなくていいの?」 「手伝い? 何の?」  普段着そのままの母に言うと不思議そうに聞き直される。それに、いましがた外で遭遇した一段のことを告げると、母はさも怪訝そうな顔をした。 「あそこのおばあさんなら、もう、半年以上も前に亡くなってるわよ。四十九日の法事もとっくに済んでるし、それ以外の法要とかもこの時期にはないわよ」  母はそう言った後、そもそもご近所で誰かが亡くなったら、すぐさま町内会からの報せが入るので、親戚などが支度を整えて訪ねてくる前に、近所の人間の方がよっぽど駆けつけ揃っているとも語ってくれた。 「でも、もうご近所にも連絡をしないような、七年とか十三年とかの法要なら、こっちが知らないだけであるかもしれないから、あんたが見たのはその人達かもね」  その説明にとりあえず納得し、私の意識から黒服の一団のことはこぼれ落ちた。…この時は。 * * *  二日後。ごろごろと帰省生活を満喫していると、母が慌ただしく箪笥をさばくり始めた。聞けば、近所の方が亡くなられたという報せが入ったのだという。  その近所の家は、私が先日、黒い服の一団が入って行くのを見かけた家だった。 * * *
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加