プロローグ

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「あれ? サボリかな?」  湖の縁に彼女は居た。  彼女がここに朝から居るのは非常に珍しい。本当は彼女がここに来るまで待つつもりだったが、その手間が省けた。  が、同時にアルトは心の準備というものが出来てなかった。  彼女が来るまでに気持ちを整理したいと思っていたのだが……。 「どうしたの?」  彼女を前にして一言もしゃべらないアルトに彼女は不信感を感じたのだろう。不可思議そうな顔で首を傾げる。 「……ちょっとな」  ただそれだけを返し、アルトは岸辺に腰を下ろす。  すると彼女は湖から上がり、アルトの前まで這いずる。 「どこかに行くのかな?」  彼女はアルトの革袋を指して聞く。 「……ちょっとな」  だがアルトはそれしか言わなかった。  すると彼女は膨れ、「ちょっとって何かな!」と怒り出した。 「……………………」  だがアルトは何も言う事が出来ない。何から話すべきなのか。どこから言えば話せるのか。答えを自らに求めてはみるが、納得の行く回答は出て来なかった。
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