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「……ただいまー」
もう遅いので、朝型の彼女はもう寝てしまっているかもしれない。
彼女の様子を伺うように、静かに声をかける。
「………………」
薄暗い部屋の中で、寝ているのかと思った彼女が顔を上げた。
電気を点けると僕を見つけて、機嫌が悪そうに大きな瞳を細めて睨み付けてきた。
「ケーキ買ってきたんだ。これ、君好きだろ?」
箱を見せるよう持ち上げると、より一層目を細めた。
「今食べれる?」
「…………」
一言も返さず、斜めに首を一回振った。
ノーの返事だろうか。
そうだよな、こんな時間だ。
この間、ダイエットしなきゃと言っていたから食べるわけもないか。
「じゃあ冷蔵庫に入れておくから、朝ご飯にしようか」
痩せたいけどどうしてもカロリーの高いものが食べたい時は朝に食べる。
そうするとその日の内にちゃんと消費できるから。
以前に彼女はそう言った。
そもそも痩せる必要、無いと思うんだけどな。
僕の見ているのと、彼女の見ている自分の体形はどうも違っているらしい。不思議だ。
最近の彼女の食事が余りにも少ないし、今日なんて朝から殆ど口にしていない。
いっそ今食べちゃってもいいのに。
そんな風に思いながら、そういえば。と思い出す。
『がんばってる自分にご褒美!』
そう言いながらあのプリンを選んでいた。
大好物をとっておきのご褒美に。
賞味期限が今日までだったはずだから、多分今朝にでも食べるつもりだったんだろうか。
それだったら今日の食の細さはハンストだったのかもしれない。
こんなに楽しみにしていたのに、と僕を責めている。
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