第1章

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いまだ睨み付けてくる彼女の視線を感じながら冷蔵庫を開ける。 「……返してよ」 恨みがましい目つきで僕と冷蔵庫を見て呟く。 「ごめんね、そんなに好きだったって、知らなかったんだ」 僕の言葉に、彼女の瞳は一層険しさを増した。 彼女の事なら何でも知っていたかった。 でも残念ながら、ここまでは解らなかったんだ。 そんな、プリンだけでこんなに怒るだなんて。 あの優しげに微笑む彼女がこんな顔をするという事も知らなかった。 もしかすると恋人には甘えて困らせたいタイプ? 怒っても精々、拗ねたような顔で唇を尖らせ、わがままをいうようなぐらいの子だと思っていたけれど。 それならそんな彼女も受け入れよう。 でもちょっと、怖いけれど、でもやっぱり。 そんな顔も好きだし。 「……かえして」 もう一度彼女は呟いた。 本当に怖い顔だ。 けれどその恐ろしさが彼女の美しさを飾りたててもいる。 普段は見られないギャップもあって、これはこれでとても綺麗だ。 もしも今、この瞬間に死んでしまったら幽霊になるだろう。 数十年にわたって語り継がれるようなそんな感じのに。 それほど強い思いを感じた。 「ごめんね」 一体いつまで、その瞳で彼女は僕を見てくれるんだろう。
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