第2話 千鬼厄万来

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 と答えた。 「そうか、よかった。もう暗いから気を付けて帰りなさいよ」  麻子は頭を下げて、その場を後にした。  風雲寺と書かれた山門の裏に停めておいた自転車に跨り通りに出る。  麻子の家と風雲寺は目と鼻の先だ。  一分程度で自分の家に着いた。どこにでもありそうな、ごくごく普通の二階建ての中流住宅だ。 「ただいま」  家の中に入ると、母親が台所で料理をしているところだった。 「あらお帰り。遅かったわね」 「うん。風雲寺に寄って来たから」  母は化粧気のない顔で小さく笑った。 「麻子ってホント信心深いのね。お父さんとは大違い」  麻子は苦笑した。  麻子の父は神社で十字を切り、寺で手を打ち鳴らす何というか天の邪鬼な人物である。新龍が死んだ時も、葬式など金の無駄だと言って親戚一同に説得されるまで葬式を上げることを拒否し続けたらしい。
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