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彼女は料理が得意だ。和洋中だけでなく、エジプト料理や南米料理、インド料理なんかも作れる。
彼女いわく、世界に存在する料理で作れないものはないらしい。しかも美味い。料理人でもないのに。
俺も彼女のおかげでずいぶんと舌が肥えてしまったし、外食することが減った。店で食べても、大して美味しいとも珍しいとも思えなくなったから。
今日もまた、彼女は俺の部屋のキッチンで食事を作ってくれている。今日はロシア料理だそうだ。
そうだ、いつものお礼のつもりで、今日は手伝おうか。
手伝いではなく邪魔に、子供の手伝いになってしまうかもしれないが。
でも、二人で一緒にキッチンに立つのも楽しそうだ。
「何か手伝おうか?」
いつもはリビングで待っている俺が、キッチンに顔を出すのは珍しいからだろう。彼女は少し焦った顔を見せた。
そんな顔もすごくかわいい。
「ユ、ユウ!? どうしたの珍しい」
よほど驚いたのだろう、声が裏返っている。
俺に応えて振り返った拍子に包丁を握る右手が滑った。
包丁の先が左手の人差し指をかする。
「あっ」
とろり、と彼女の指の先から青い液体が流れ出した。
アオイ、チガ、ナガレタ。
「あ、ええと……」
彼女は痛そうに顔を歪めて傷口を押さえている。
そして気まずげに視線をさまよわせていたかと思うと、肌の質感がだんだん変化していった。
「私、実は宇宙人なの」
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