3、お兄ちゃん

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「今度、ちゃんとお礼しないとね」 「えっ?」 「ごめんねって沢山言うより、遅刻させちゃってごめんね、でもありがとうって沢山言った方が圭介くんは喜ぶと思うわよ」 でも、迷惑かけたのは事実だから何か包まないとね。 なんて言っているお母さんをまじまじと見つめながら、圭介の呼び方が『木名瀬くん』から『圭介くん』になってるな、なんて思った。 自分の回りの人たちが、圭介と仲良くなるのは嬉しい。 出来れば、同じ高校の友達も一緒に仲良くしたいんだけどね。 それはまだまだ無理かなぁ。 枕にポスンと埋まりながら、この間のギラつく圭介を思い浮かべた。 あんなの見たら、もっと怖がられちゃうね。 でも、相手がみんな倒れてからの虚しそうな圭介の目を忘れられない。 琥珀色の瞳に浮かぶ色があまりにも暗くて、自分から声を掛けられなかったんだもん。
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