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出会いは、別段ロマンチックなものでも、特別なものでも無かったと思う。
学校帰りの私と華(はな)ちゃんに声を掛けてきた、銀色の髪の人。
細い眉毛と、色素の薄い少したれ目な目元が、なんだかアンバランスで可愛く思えた。
口にくわえた煙草も、和柄の効いたデニムも、黒いタンクトップも、別に好みでは無かったけれど。
「ねぇ、暇?」
少し掠れた低めの声は、不思議と嫌では無かった。
ただ、煙草をくわえていても話って出来るんだなって感心しただけ。
「どいてください」
華ちゃんのキツい声に、ちょっと後ろに下がってから、困ったように首を傾げた。
「怒らせるつもりじゃ無かったんだけど」
「別に怒ってませんから」
私の手をぎゅっと掴んで、彼らの前を通り過ぎようとする華ちゃんの手は、じわりと汗で濡れていた。
私はその手の必死さに、やっと目の前の人達が、関わっちゃいけないタイプの人なんだと目を伏せた。
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