1、それは暑い夏の日に

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「行くよ」 ぐいっと引かれた手に慌てて着いていきながら、通り過ぎる瞬間彼を見上げた。 思ったより高くなくて、まだ困ったような曖昧な表情を浮かべている。 「名前だけ教えて」 「……ゆき」 それだけ、私と彼が初めて会った日に、交わした会話はそれだけだった。 そこに丁度来たバスに乗ってその場を離れても、華ちゃんはまだ緊張感を漂わせて口を引き結んだままだった。 やっと駅前のいつものファーストフード店に着いて、一口二口シェイクを飲み込んでから、しっかり華ちゃんに怒られたのは言うまでもない。 「もう!なに考えてんの?あんなのに名前教えちゃダメでしょ!」 「ごめんなさい、なんかつい……」 「なんかついで、不良に目付けられたらどうするの!ああいう連中は何するか分かんないんだからね?」 「……ごめんなさい」 本当に、つい、だったんだ。 ただ、聞かれたから答えただけ。 華ちゃんは、そんな私を呆れたように見て、ズーッとシェイクを吸い上げてからふぅと息を吐き出した。
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