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圭介が突き破ったと言うガードレールは、とても景色のよいのどかな場所にあった。
遠くに淡く山並みが浮かび、鳥の声が葉ずれと揺れる。
確かにそこら辺の草むらから、うさちゃんや瓜坊なんかがひょこりと出てきそうな、自然豊かな道路脇。
けれど、下から吹き上げる風が爽やかと言うには少し強すぎて、下を覗きこんだ私はピシリと動きを止めた。
固まるのは圭介の役なのに。
「雪ちゃんっ!ダメだよ危ないから」
片手しか使えないからなんの役にもたたないねって、行きの車のなかで苦笑いを浮かべていた圭介に、ぐいと後ろに引き戻された。
「圭介……」
「ん?」
「ここから落ちて生きて生還とか、圭介ってどんな体してるの?」
アニメのヒーロー?
「生きて生還って……死んでたら生還できないよね」
今聞いてるのはそう言うことじゃないよっ!
確かに『頭痛が痛い』みたいになったけど!
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