13、不可思議な訪問者

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「それは、圭介が大切だからだよね」 「大切……?」 「そうであって欲しいって思う私が甘いのかもだけど」 「大切……」 「でも、もう圭介の手を離してください」 しがみついているみたいに見えた。 圭介が離れていくんじゃないかと、重たい鎖でがんじがらめにして、しがみついているみたいに。 「……ケイまで私を捨てるって言うの?」 「子どもってね、巣だっていくものなの。 だから親は、たまにでも帰ってきたくなるような巣でありたいんだって」 うちのお母さんが言ってた。 お兄ちゃんが、たまにでも帰って来てくれるのが嬉しいって話からだったと思う。 たとえ、どこかで新しい巣を作っても、たまには帰ってきたいと思われる古巣でありたいって。 「まだまだ先だと思うけど、私は圭介とそんな親になりたい」 「……」 「鎖で繋ぐ以外にもやり方があったと思うの」 あなたがどんなに大変だったのか、想像も出来ないけれど、無責任な父親と世間知らずな母親の元に産まれた圭介には、なんの責任もない。
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