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「ケイ」
俺が呼ぶと、ピシッと背筋が伸びるのは、ケイだけじゃねぇ。
その回りの派手なのまで大人しくなれなんて言ってねぇんだけどな。
「ハルさん!……かっこいいですね」
「は?馬鹿なのか?
で、雪はまだ来ねぇのかよ」
「あっ、雪ちゃんまだみたいです。俺は着終わったからって追い出されちゃって……」
死んでも白タキシードなんて着ねぇと言った俺と違って、大人しく白を着せられているケイは、それはそれで似合って見えた。
言わねぇけどな。
「ハルさん、やっぱり白は着なかったんですね……」
恨めしそうな顔をするケイを鼻で笑ってやる。
誰が、俺の王子さま姿なんて見てぇんだよ。
濃い目のグレーのタキシードで、似合うだろ?とポーズを取ると、はいと素直に頷きやがった。
……そう素直だとこっちも反応しずれぇよな。
「華さん綺麗ですね」
にこやかに華に話しかけるケイの後ろ姿は、いつの間にか華よりも高くなっていた。
この間、また伸びたんじゃねぇか?って言ったら、成長期遅れて来てくれたみたいなんです、なんて嬉しそうに言っていた。
きっと、ここ数年まともなもん食って、夜はちゃんと寝るって生活になったからだろう。
まぁ、雪は少し不満そうだったけどな。
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