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ふと視線を感じて振り返ると、黒留袖を着た母親たちがにこやかにこちらを見ていた。
……三人並ぶとなんか迫力あるな。
華の母親は、やっぱり背が高くて着物姿も凛と美しい。
俺たちのお袋はちっせぇからな、まぁ……あれを着てれば母親らしくはあるんじゃねぇか?
そのお袋は、なにを言ったのかころころと楽しげに、着心地悪そうに帯を気にするケイの母親の肩をひっぱたいている。
ケイの母親とケイは、まだ二人きりでは和やかに話をするって関係ではない。
けれど、雪やお袋を交えれば和やかに団欒できないこともないらしい。
ゆっくりゆっくりだ。
なにも焦る必要はねぇ。
「これで、正式にお前が息子になるんだなぁ」
感慨深そうに呟く一条の親父は、既にアルコールが入ってるのか目が潤んでいる。
……そのシャンパン何杯目だ?
「いやぁ、華ちゃんも雪ちゃんも綺麗だねぇ」
その隣で涙を拭うのは、陸ちゃんこと一応俺らの親父だ。
まぁ、親父って貫禄は皆無だけどな。
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