第1章

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僕の生まれた1993年はどういう年だったのだろう。あまりぱっとした年ではなかったのではないか、と言う気がする。 ソ連が崩壊してまだ1年が経ったばかりのころだ。それまでは、超大国と呼べるような陣営が世界には2つ存在していたのだ。 しかし、片方は崩壊してしまった。 そして生き残った方は今、経済危機や、税金や、紛争や、失業や、医療保険の問題であえいでいる。しかしもう彼らには逃げ込めるもう一つの「世界」はなかった。 ざっくり言うと、僕の冷戦観はそんなものだった。とりあえず今の所は、僕の中ではそういうことになっていた。 かつては本気で、世界中が核戦争の危機を警戒していた時代があったのだ。 少なくとも、僕が生まれる前には。
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