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「僕のBは、『BB』だ。うちは両親ともAB型で、それぞれからBをもらったからBB。君のAが『AA』でも『AO』でも、『BB』との組み合わせからは『AB』か『BO』しか生まれない。絶対にAは生まれない」
優子の顔が、白くなっていく。
「……BBって、間違いないの」
「ああ。僕は小学生の時に交通事故にあって、輸血を受けたことがある。その時、母親が、『息子は珍しいBBなんですけど大丈夫ですか』って医者に縋りついていた。大して珍しいわけじゃないし、輸血にBBなんて分類はないんだけど」
優子が、下を向いた。
「どういうこと」
否定して欲しかった。勘違いであって欲しかった。
あまりにも長い沈黙の後。
「……たぶん、あなたと出会う前に、付き合っていた人だと思う」
優子は涙を浮かべていた。
泣きたいのはこっちだった。
「誰だ」
問い詰めながらも、僕の頭の中には既に一人の男の名があった。
優子は黙った。
「谷沢部長か」
美佳が生まれたタイミングからして、妊娠したのは僕と優子が出会ったあのループの日の周辺のはずだった。
「不倫していたのか」
「……ええ、そう」
「……全て、話せ」
聞きたくなんかなかった。知らない方が幸せということもある。そんなこと、常識として知っていたはずなのに。
「あの日、あの3連休、私と谷沢は名古屋出張のついでに熱海旅行に行くはずだったの。けど、突然、息子をディズニーランドに連れていかなきゃとかいって、谷沢はキャンセルした。それで私は怒って、困らせてやろうと思って、妊娠したら谷沢も真剣になるんじゃないかと思って、前の晩、谷沢に抱かれる時、安全日だからと嘘をついて、避妊しなかった」
おぞましい想像と、おぞましい推測が、僕の精神を崩壊させ始めていた。
「続けろ」
「けど、翌朝になって、怖くなったの。本当に妊娠していたらどうしようって。谷沢は、離婚して私と結婚してほしいという私の願いを、いつもはぐらかしていた。本当に妊娠していて、谷沢に結婚を拒否されたら、お腹の子はどうなるんだろうって。そんな気持ちで新幹線を降りたときに、あなたから告白されたの」
ああ。
やっぱりそうだった。
何度も何度も口説いた。100度もフラれ続けた。それなのに、あの時の告白だけが受け入れられたのは。
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