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大和屋娘おぎんは、一時の情に動かされたが、人の首に紐を掛け、殺害に及んだこと、これも重き罪に問われる。但し、命を奪うまでには及ばなかったこと、ここは、情状を酌み、大坂寄場送りとする。
本日の白洲、これまで」
お奉行が退座された。
お白洲にいた風間が、賢太郎のいる控えの間にやって来た。
「お前のお蔭で、謎めいた一件が、お奉行の手で、見事裁かれた。お前の初手柄や」
「ありがとうございます。ですが、お調べに回られた風間さん、辰三親分がいたからですよ」
「その通りだ。ここでは、皆が動いたり、知恵を出しあったりして、事を明らかにするのだ。片瀬、これからも、このようにして、知恵を貸してくれ。折井先生のようにな」
「これは、お奉行、恐れ入ります」
いつの間にか控えの間に入って来たお奉行に、風間、賢太郎は、礼をした。そのまま、お奉行は、去って行った。
「賢太郎、今日からのお調べ書きは、お前が事細かに書き記した事柄で埋まる。折井先生みたいにやぞ」
賢太郎は、自分が書き記したお調べ書きで、書面が埋まる様を思い描こうとした。だがまだまだ、今日は第一歩なのだ。折井先生のようになるまでには、ほんの手始めに過ぎないことも、よく分かっていた。
そうして、賢太郎は、お調べ書きの部屋に向かった。折井先生の宝の山へと。
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