第1章

7/7
前へ
/132ページ
次へ
透の足が止まる。 振り向いて部屋の中を除くと、珠理子は何も言わなかったかのように『収納作業』をしていた。 「やだぁ、お母様。また、おじいさまに言い付けるのですか?」 箱から取り出したばかりの真珠のネックレスを右手に持ち、百合愛が、口に左手を当て、わざとらしく言ってみせた。 二人はクスクス笑いをし、再び作業に没頭した。 透は、ペルシャの暖色系のじゅうたんが引かれた細長い廊下を歩き、自室へと向かった。 「……くそ!この、シロアリ女が!」 小声で呟いた。
/132ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加