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そう怒鳴ったが、返事はない。
今彼女がいるのは、クローゼットルームに違いないのだが、
『どこの』クローゼットルームにいるのだろう…
ここか?!
そう思いながら、透は、四階の奥から三番目の部屋のドアノブを勢いよく引いた。
そこは畳十六畳の部屋。
妻の珠理子が、床に置かれている大量の紙袋の中から、ひたすら四角い箱を取り出しているところだった。
「あら、透さん。いま帰ったの」
珠里子は箱の中を見ながら、そっけない口調で言った。
「お母様、このバックはどこの棚に入れようかしら?」
部屋の中央にふたつ並ぶカッシーナのタンスの奥から、ルイヴィトンのバックを手に、ひとりの女の子が姿を表した。
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