第2章 裏腹な考えと僕の怒り

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 裏腹なことを僕は考えた。 愛ちゃんのことは本当は好きだ。 だけど、口では好きじゃないと言おうかと。 なにぶん、態度に出てしまっているようだから、このことに関しては気をつけるために田原さんに早めに訊いておこう。 なぜ、このようなことを考えたかというと、みんなに僕の気持ちを知られてしまっている以上、何だか愛ちゃんも含め僕が馬鹿にされているんじゃないかと思うのだ。 いい笑い者というか、いい話のネタにされているような気がしてならない。 こういう成り行きになったのも、僕としては自然なことであり、田原さんにはたまに井下はホントにネガティブだなと言われるけど自覚はしていない。 ただ、僕としては普段は温厚だけれど一度キレると自分でも収集がつかなくなるのが悪いクセだと思う。  確かあれは高校一年の卓球部の合宿の時だったか。 みんなと一緒に練習や筋トレをするのがいっぱいいっぱいだった頃、僕は合宿所の部屋の前を通り過ぎようとした時、閉まっているドアの向こうから聞こえてしまったのだ。 「井下は身体はでかいけど何の役にもたたないウドの大木だ、ギャハハッ!!」 確かにショックでもあったが、プツリと頭の中で何かが切れる音がした。 その後のことは記憶にない…。 気がついてみると二年生の先輩達二人と同級生一人が目の前に口から血を流してうつ伏せで倒れていたのだ。 僕は怖くなり、その場から逃げた…。 後から聞いた話によると、 「突然、井下が暴れだしたから止めようとしたけど、それにも抵抗しようとしていて、手におえなかったのさ」 「お前、キレたら何するかわからないな」 など、自分自身でも気付いていない一面を垣間見たような気がした。 そんなこんなで今まで「怒り」についてはたまにはイラッとする時もあったけど、あの時のような非常に激しいそれに至ったケースはない。 あの時の一度きりだ。 あれから先生にも呼ばれて、最後に、 「以後、気をつけるんだぞ!」 と、言われたが、どうやって気をつければいいのかわからない。 「怒り」という感情をコントロールするのは僕にとって非常に難しい作業だ。 本気でキレることはめったにないとしても。
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