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益田が話しかけてきて、
しかし俺はそれを半分聞き流す。
しょうがないだろう?疲れてるんだ。
「あーもー。
先生ちゃんと聞いてます?」
「はいはい、聞いてますよっ……?!」
おざなりに返事をしていると、突然、首筋にヒヤッとした感触が。
益田が、かき氷の入ったカップを俺の首に押し当てたようだった。
「あははっ、びっくりしました?」
笑いながら俺の顔を覗き込む益田。
が、すぐに怪訝な表情になった。
「せんせー……?」
俺の異常に気が付いたんだろう。
一体何が起こったのかというと、
冷たさに驚いた俺は、床に着いていた指先に変な力を入れてしまった。
ぐきり、と嫌な音はきっと俺の脳内に響いただけだろう。
悪くても、軽い突き指。
だけれど痛みはまだ続いている。
「指、痛めちゃいましたか?」
ちょっと眉を下げ、彼は俺を見ている。
「いや、大丈夫だ。大した事無い」
そう言いながら、俺も彼を見返す。
「すみません、驚かせて……」
珍しく落ち込んでいる様子だ。
そう思ったのもつかの間、何かを思いついたようで、下げ気味だった顔を上げた。
「そうだ!冷やした方がいいですよね!」
「……大丈夫だ」
コロッと変わった表情が今度は張り切っているようだから、俺はもちろん遠慮した。
「駄目ですよ、ちゃんと手当てしないと」
そう言った益田は、まだ残っていたかき氷を口に含んで、
それから俺の手首を掴んで、指も口内へ。
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