5.冷たい床と、天井と教え子

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放課後、俺はさっきまで、 明日使うプリントを数枚ずつ纏め、ホチキスで止めていた。 ふいに冷たい風を感じ、窓を閉めようと立ち上がったその時だった。 視界は反転し、見えるものは天井。 そして、益田の顔。 ……つまりは、押し倒されていた。 ここは彼のおすすめのサボり場の1つ。 部活でも使われない場所だから、ひっそりとしていて、作業するには丁度良かった。 昼間は少し暑かったからここにいたんだ。 丁度暇だと言った、益田に手伝って貰いながら。 やっぱりコイツの善意をそのまま受け取ってはいけない。 知っていたはずなのに、今日はうっかりしていた。 マウントを取った益田の力は、すらっとした見た目にあわず強い。 押さえられた手首を動かそうとしながら、 彼の腕をじとりと見ていると、考えた事が伝わったのか、彼は口を開いた。 「俺、着やせするタイプなんですよ」 今半袖だし、解りやすいでしょ?と、 言われて見てみれば、確かに力の入った筋肉が浮き出ている。 まあ、今まで腕に注目してなかったから、ただ単に気づかなかっただけかもしれないな。 そう思った所で、真っ先に浮かべるべき疑問がようやく出てきた。
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