5.冷たい床と、天井と教え子

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「なあ、おい、益田」 「何ですか?」 「この体勢はなんだ?」 「決まってるじゃないですか、押し倒しているんですよ」 ニコリとさわやかな笑みを浮かべ、彼は言った。 「離せ、今すぐ」 「嫌です」 変わらず笑いながら拒否された。 やっぱり腕は動かなくて、益田は俺の脚の間に体を収めているし、彼の片足が俺の片方の太股に乗り上げてもいる。 反撃するのは難しい。 どうしたものかと考えてみた。 とりあえず殴ったりと暴力的な事は、今さら感もあるが避けておこう。 ……実行出来ないし。 まず、話し合ってでもみるか。 「益田、何でお前はやたらとこういう事を俺にしてくるんだ?」 「したいからですよ」 なんだ、やっぱりセクハラか? そう尋ねると、一際口元を吊り上げ、 だけど、おい、目が笑っていないぞ。 「やだな、愛情表現ですよ」 どこかで見たような答えを返された。 そんな訳、あってたまるか! 「どこの世界に、縛ってキスマークつけて写真撮ったり、突然押し倒す愛情表現がある?」 「少なくともここにありますね。それに先生……」 そこで益田は言葉を止め、やっぱりいいやと言うのをやめた。 ……何なんだ。 動かせるのは口ぐらい。 せめて今の続きを言わせようと、俺は唇を動かした。 いや、正確には、動かそうと、した。 開いた口に、当たるのは低い温度の空気のはず。 だけど被せられた、熱い皮膚。 これは……キス、されているのか?
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