5.冷たい床と、天井と教え子

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「さすがに解りますよね?俺が、どんな意味で先生にこういう事するのか」 数歩離れた位置に、俺の反応を待ちながら立っている。 まっすぐなその目に、若いってすごいな、とかそんな事がかすかに浮かんできたけれど、それよりも、なによりも。 この異常なまでの気恥ずかしさは何なんだ。 答えない俺の顔を見て、益田は笑いながら言った。 「返事は明日でいいですから、じゃあ、お先に失礼しますね」 そうして教室を出て行った。 閉まったドアを確認すると、壁について体を支えていた手から力が抜け、冷たい床に座り込んだ。 顔が、熱い。 いきなりあんな事されたんだから、戸惑ったせいだ。 当たり前だ。 そう自分に言い聞かせ、床と同じように冷たい壁に頬をつける。 室内は、夕日に染まっている。 例え俺の顔が自覚している体温の通りに血が上っているとしても、 きっと益田には解らなかった筈だ。 そう願って、気を持ち直す。 俺も出ようとドアを開け、さっきの彼の言葉を思い出した。 返事は、明日でいい。 あし、た……? 早い、早いだろ、それ! 帰ったら検索でもしようか。 検索ワードは『傷つけない告白の断り方』 もしくは、振り方とか。 断る、普通に断るからな?! 当然の事を内心叫びつつ、プリントを持って職員室へと向かった。
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