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「さすがに解りますよね?俺が、どんな意味で先生にこういう事するのか」
数歩離れた位置に、俺の反応を待ちながら立っている。
まっすぐなその目に、若いってすごいな、とかそんな事がかすかに浮かんできたけれど、それよりも、なによりも。
この異常なまでの気恥ずかしさは何なんだ。
答えない俺の顔を見て、益田は笑いながら言った。
「返事は明日でいいですから、じゃあ、お先に失礼しますね」
そうして教室を出て行った。
閉まったドアを確認すると、壁について体を支えていた手から力が抜け、冷たい床に座り込んだ。
顔が、熱い。
いきなりあんな事されたんだから、戸惑ったせいだ。
当たり前だ。
そう自分に言い聞かせ、床と同じように冷たい壁に頬をつける。
室内は、夕日に染まっている。
例え俺の顔が自覚している体温の通りに血が上っているとしても、
きっと益田には解らなかった筈だ。
そう願って、気を持ち直す。
俺も出ようとドアを開け、さっきの彼の言葉を思い出した。
返事は、明日でいい。
あし、た……?
早い、早いだろ、それ!
帰ったら検索でもしようか。
検索ワードは『傷つけない告白の断り方』
もしくは、振り方とか。
断る、普通に断るからな?!
当然の事を内心叫びつつ、プリントを持って職員室へと向かった。
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