6.上手な告白の○○方

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よし。 ほぼ徹夜の状態で俺は1日の授業を終え、 そして教室で益田と向き合っていた。 彼も俺を待っていたらしく、 下校時刻の少し前にも関わらず、教室に1人、残っていた。 俺が寝不足なのは、 昨日の告白に対する、上手な断り方の検索および、シミュレーションを繰り返した結果だ。 準備は万端。 さあ、話を切り出すとするか。 「益田、昨日の話なんだが」 「はい、待ってました!」 意気揚々と返事をする益田。 おい、お前は今から振られるんだぞ? 解ってるんだろうか。 まず、はっきりと。 曖昧に誤魔化してはいけないらしい。 相手も納得できるように断る。 だけれどキツイ言葉は言わないように。 そんな感じでいこうと決めている。 「俺はお前と付き合う事は出来ない」 ……よし、きっぱり言った。 言葉に合わせて見据えた益田の表情は、 断られたにも関わらず、落ち込んでいるとか、悲しむ様子は一切見せていない。 「どうしてですか?」 いつもと変わらぬ顔で、理由を述べろとそうせかしてくる。 いいだろう。 それはちゃんと俺も用意してきている。 自分から尋ねてきてくれるなら、冷静なようだし、好都合だ。 「まず俺は教師で、お前は生徒だからだ」 「他には?」 言い終えた途端、まず、と付けるからにはまだ続きがあるだろうと、聞かれるままに他の理由を出す。 「男だろう?俺もお前も」 「次は?」 「10歳以上離れてる」 「他にはありますか?」 間髪入れずに問われて、用意してきた答えを返す。 だけど個々に対する反応が何も無く、 面喰ってしまって、他の言葉を忘れてしまった。 他にもいくつか、考えていたはずなのに。 「……時間が無い、とか」 「とか……他は?」 詰まっている事に彼も気づいている筈だ。 それを踏まえて、俺を追い詰めてくる。 どうすればいい。 何て言えば諦めるんだ?
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