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「……そうですか?」
本当に?いいんですか?と、益田はやたらと念押しをしてきた。
「ああ、大丈夫だ」
だからさっさと行きなさい。
そう言おうとしたのに、
俺の口から飛び出たのは、言葉にならない、ただの空気だけだった。
――理由。
奴が突然に俺のケツを触ってきたからだ。
それも、撫でるじゃ収まりきらない。
五指は自由に動き、掌は押し付けるように。
つまりはなんだ、揉んできた。
「おまっ、益田!ふざけんなよ!」
数秒後、我に返った俺は、すぐさま彼を怒鳴りつけた。
そして益田は、こう返してきた。
「先生!俺はふざけてなんかいません!至って真面目なんです信じてください!」
「余計悪いわ!」
ほんっとーに、たちが悪い。
悪戯にしろ、本気にしろ。
「いい加減にしないとな、セクハラで訴えんぞ!」
「えー、でも立場的には、先生の方が上じゃないですか」
だからセクハラじゃないと、彼は言う。
「いやいや、でもな、考えてみろ。最近じゃ、教師が偉そうになんて到底できないだろ?」
逆に、生徒と保護者に気を使わなきゃいけない。
セクハラなんてしてみろ。
即刻解雇だ。
それどころか捕まってしまう。
……する気が無いから関係ないけど。
それに、立場の上下に限らないんだよ!
そう返すと、益田は一瞬何かを考え込んで
「……じゃあその現状を利用して、俺が先生に好き放題すればいいんですね。わかりました!」
その顔は、とってもいい笑顔で。
「解ってねえよ!そんな話してねえよ!」
ぜんっぜん、よくねえ!
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