1.さわやかじゃない朝

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「……そうですか?」 本当に?いいんですか?と、益田はやたらと念押しをしてきた。 「ああ、大丈夫だ」 だからさっさと行きなさい。 そう言おうとしたのに、 俺の口から飛び出たのは、言葉にならない、ただの空気だけだった。 ――理由。 奴が突然に俺のケツを触ってきたからだ。 それも、撫でるじゃ収まりきらない。 五指は自由に動き、掌は押し付けるように。 つまりはなんだ、揉んできた。 「おまっ、益田!ふざけんなよ!」 数秒後、我に返った俺は、すぐさま彼を怒鳴りつけた。 そして益田は、こう返してきた。 「先生!俺はふざけてなんかいません!至って真面目なんです信じてください!」 「余計悪いわ!」 ほんっとーに、たちが悪い。 悪戯にしろ、本気にしろ。 「いい加減にしないとな、セクハラで訴えんぞ!」 「えー、でも立場的には、先生の方が上じゃないですか」 だからセクハラじゃないと、彼は言う。 「いやいや、でもな、考えてみろ。最近じゃ、教師が偉そうになんて到底できないだろ?」 逆に、生徒と保護者に気を使わなきゃいけない。 セクハラなんてしてみろ。 即刻解雇だ。 それどころか捕まってしまう。 ……する気が無いから関係ないけど。 それに、立場の上下に限らないんだよ! そう返すと、益田は一瞬何かを考え込んで 「……じゃあその現状を利用して、俺が先生に好き放題すればいいんですね。わかりました!」 その顔は、とってもいい笑顔で。 「解ってねえよ!そんな話してねえよ!」 ぜんっぜん、よくねえ!
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