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思わず、俺は目を閉じた。
……そのまま数秒。
何も起こらないままなので、恐る恐る目を開けると、目の前には変わらず、益田の顔。
顔、が、やたらと赤くなっていて、唇がわなわなと震えていた。
そして俺の視線に気が付いたのか、手は離され、顔も離れていく。
……気分でも悪くなったか?
そう思って声をかけようとした瞬間、奴は再び叫んだ。
「先生のキス顔ゲットー!!」
「……は?!」
「あ、でも記憶にしか残らねえ!!
先生、もう一回目、瞑ってください!」
そう言って携帯を構える益田の頭を、
拳骨は流石にまずいから、開いたままの手で思いっきり叩いた。
「補習終わり!さっさと帰れ!」
言い終わってもう一発。
しぶしぶ鞄を持ち、教室を出た彼を見て、ようやく俺は一息ついた。
……なんで俺、目をつぶった。
どうして、抵抗しなかったんだ。
彼が解らないけど、俺自身も意味が解らない。
でも今度は、相談するのはやめとこう。
絶対、碌な意見が貰えないから。
そして俺も、職員室へ向かった。
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