最後のメッセージ

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ある日、上司から呼び出された。 「若林君、来月からテニスのコーチが来てくれることになりました。  橘 明日香さんです。  知ってるよね?」 私は、驚いた。 「えっ…はい!」 紹介された女性のコーチは、世界ランキングで最高4位まで駆け上がった有名選手である。 世界の4大トーナメントの全豪オープン、全仏オープン、ウィンブルドン、全米オープンで、いずれもベスト4に入った経歴がある。 今は現役を引退しているが、このような、すごい経歴の持ち主である。 テニスの経歴からすると、会社がコーチに支払う金額は、相当なものであろうと思った。 こんなふがいない私を見かねて、会社がお金をかけてコーチを雇ってくれたのであろうか? もう、とっくに解雇されてもおかしくない私に、今さら会社は何を考えているのだろうか? 疑問が目まぐるしく湧き上がってきた。 上司の話は続いた。 「橘さんにコーチしていただける機会は、めったにないと思います。  若林君にとっても、良い経験になると思います。  ぜひ、コーチの指導を受けて、頑張ってください。」 私は、とりあえず前向きな態度で返事をした。 「はい、ありがとうございます。  できる限り、頑張ります。」 私は、これからどうなるのか、不安がよぎった。 コーチから将来性なしと判断され、会社から解雇される可能性もあると考えた。
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