第1章

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 チビデブ吸血少女が、イケメンと恋に落ちた理由               近藤 小古茶  1.  今日も母は嘆く。 「なぜなの。なぜ私とダーリンの血を継ぎながら、こんな醜い顔をしているの」  今日も父は嘆く。 「27代続く死歯(しば)家はじまって以来の失態だ。こんな醜い娘が生まれるなんて、あってはならないことだ」  今日は兄も嘆く。 「こんなに醜い妹がいるなんて知られたら、僕は外を歩けない。なぜだ。僕は、こんなにもうつくしいのに」  ある程度呟き終わると、彼らは口を揃えて力説する。 「でも、どんなに醜くても、お前への愛は変わらないんだからね!」  と。  155センチ。  ずんぐりと、どんぐりのような体型。まるまると太って色白なのでホワイトソーセージを連想させる。  顔は、アンパンのようにまんまるとして、その中にゴマのような小さな瞳。せっかくの母親譲りのグリーンの瞳もおかげで目立たない。  低くて小さな鼻。  眉は短く薄い。  唇は、上唇はぼってりと厚いのに下唇が薄くてバランスが悪い。  色の白さと淡い栗色の髪の色は唯一自慢できるが、彼女をはじめて見る人は、軽く噴き出すか眉を寄せる。うつくしい髪の毛もインパクトの大きい見た目のせいで印象が薄い。容姿や体型のせいでいじめに遭ったこともある。  ひとことで言うと、うつくしくないのだ。  そんな娘の夏来(なつき)とは違い、肩まで長さがあるのに艶があって清潔感を感じさせる黒髪。りりしい眉に切れ長の瞳。苦み走ったいい男で、近所を散歩すると、幼女から100歳越えの熟女を失神させるほどのフェロモンを持つ父の達郎(たつろう)。  栗色がかったブロンドの髪は豊かで、小さな顔には、絶妙なバランスで、大きなグリーンの瞳、高く形のいい鼻、セクシーな唇が配置されている。グラマラスな体つきは、いつの時代も男性を魅了し、一時期は、ハリウッドで女優をしていたこともある母のロージャ(ろーじゃ)。  父と母のDNAを色濃く継いだ兄の冬来(ふゆき)は、モデル体型の長身で、ブロンドの髪の毛に漆黒の瞳をきらめかせ、男女とも魅了する二枚目である。「桜木町5丁目イケメン様」で郵便が届く強者だ。  そんな恵まれすぎる家族の中で、なぜに夏来だけが異質なのか。  それは、こっちが聞きたいと思い続けて16年。
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