黙っていたうさぎ

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黙っていたうさぎ

 あるところに、動物たちが仲良く暮らす村がありました。大きな動物も、小さな動物も、自分のできることを一生懸命やって村のために働くので、村はとても栄えていました。  耳長のうさぎさんも、この村に住んでいました。  うさぎさんとその家族は、以前は、村から離れた森の中でひっそり暮らしていたのですが、ある時、食べ物に困って村の近くまで出てきた時に、村に住むくまさんに助けてもらい、それが縁で村に引っ越してきたのです。  うさぎさんがくまさんに初めて会った時、大きなくまさんはとても怖そうに見えました。でも、くまさんは、うさぎさんにとても優しく話しかけてくれました。  くまさんは、「森の中より村のほうが安全だし、おいしい食べ物もたくさんあるよ」と言って、移住を勧めてくれました。  引っ越してみると、くまさんの言うとおり、村の生活は天国のようでした。村の動物たちは、みんなくまさんと同じく、とても親切で、病気がちのうさぎさんの両親に、お薬や食べ物を分けてくれました。  うさぎさんは、そのお礼にと、長い耳を活かして、村の暮らしに役立つ話をいろいろな所から仕入れては、きつねの村長さんやみんなに教えました。  特に重宝がられたのは、高い空を飛ぶ渡り鳥たちの会話でした。 「明日は天気が荒れるから今日中に森を越えなくちゃ」 「今年の夏は短いらしいよ。すぐに寒くなるんだって」  村の上を飛んでいく鳥たちの『お天気予報』は正確でした。長い耳で彼らの話を聞いたうさぎさんが、村のみんなに聞いたままを伝えると、みんなはその話に基づいて、畑の収穫を急いだり、次の季節に植えるものを決めたりしました。  おかげで、村はますます豊かになりました。  くまさんは、大活躍するうさぎさんの姿を見て、とても嬉しくなりました。  うさぎさんは、たくさんの人に喜んでもらえるきっかけをくれたくまさんに、深く感謝していました。  二人はすぐに親友になりました。  くまさんとうさぎさんは、湖が見える小高い丘の、大きな木の根元に座って、いろんなお話をしました。  時には、うさぎさんが、くまさんの恋の悩みを聞いてあげました。  うさぎさんが、 「相手がくまさんのことどう思っているか、調べてきてあげる。すぐに分かるよ」  と言うと、くまさんは顔を真っ赤にして、 「いいよいいよ。渡り鳥の天気予報と違って、当たって嬉しくないってこともあるから」 と答えました。  うさぎさんは、それ以上のお節介はしませんでしたが、優しいくまさんの想いは、きっと相手に伝わるだろうと確信していました。  うさぎさんが昔住んでいた森の向こう側には、人間という恐ろしい生き物が住んでいました。でも、その大きな森が自然の塀となって、動物たちの村を守ってくれていました。  平和な村で、くまさんとうさぎさんは、楽しく暮らしていました。
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