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翌日、村長さんは、「安全な」西の森に食べ物を取りに行く派遣隊を結成すると発表し、志願者の募集を始めました。
大きな体の動物たちが次々に集まりました。
俺に任せて、と言わんばかりに、意気揚々と参加の意を表する彼らを、うさぎさんは木の陰からじっと見ているしかありませんでした。
数日後、うさぎさんのところに、親友のくまさんがやってきました。
「うさぎさん、元気ないね。どうしたの?」
優しく聞いてくれたくまさんに、うさぎさんは事情を話すことができません。何でもないよ、とうさぎさんは寂しそうに答えました。
「明日は派遣隊の出発式だね。僕も派遣隊の帽子をかぶって行進するんだ。うさぎさんも見に来てね」
うさぎさんはびっくりしてくまさんを見上げました。
「くまさん、派遣隊に志願したの? どうして? 君は三か月前に結婚したばかりじゃないか」
昔、うさぎさんに恋の悩みを相談していたくまさんは、ずっと好きだった相手にやっと想いを伝え、最近ようやく結婚したのです。
うさぎさんは、白いドレスを来て恥ずかしそうに微笑んでいたくまのお嫁さんの姿を思い出しました。
くまさんは、誇らしげな顔で派遣隊の話をしました。
「みんなのための仕事ができるなんてカッコイイだろ? 僕は体も大きいし、荷物もたくさん運べるから、派遣隊の仕事にはピッタリだよ。たくさん食べ物を取ってくるから、楽しみに待っていてね」
「でも、西の森は…」
「安全だって村長さんが言ってたよ。鉄砲を持たない人間ばっかりいるんだって? それなら怖くないさ。人間が邪魔しにきたら、ガオーって脅かしてやる」
くまさんは、両手を上げて、人間に襲い掛かる真似をしました。
「くまさん、村長さんが安全だって言ったのは、本当は…」
うさぎさんは途中まで言って、声が出なくなってしまいました。
話せば、一家そろって村から追い出されてしまいます。
くまさんは、自分を見上げるうさぎさんが震えているのに気付かず、にこにこと笑いながら、ガッツポーズをして、帰っていきました。
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