彼の憂鬱。

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「青井せんぱぁ―い!」 そう呼ばれ、振り返ると、沙希が駆けてきた。 (後ろにいるのは佐藤か。) なかなか部活に来ないな、と残念に思っていた。 一言声をかけようか。 足を止めると、 「先輩。行きましょっ♪」 と、沙希がひっぱって歩き始めた。 「ああ、わかった。」 怜奈とはあれから会っていない。 家を訪ねて10日になるか。 病院には行っただろうか。 気にはなっていたがメッセージを送っても電話をしても何も反応がないのであきらめていた。 ファーストフード店で沙希の話を聞いているとあっという間に時間が過ぎた。 女子というのはこんなにおしゃべりなのか、と苦笑する。 帰り道でも同じように話をきいて頷いていると、すっと沙希が黙った。 不思議に思って横を見ると、 潤んだ瞳で見つめている。 「どうしたの?沙希ちゃん」 と、わざと言う。 「先輩のいじわる…」 沙希が伸び上がってキスをしてきた。
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