彼の憂鬱。

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振り返るとそこにいたのは、怜奈。 いや、怜奈のような顔つきの女、といったほうが正しいだろうか。 「うそつきうそつきうそつきうそつきうそつき…」 無表情のその女は手を伸ばして青井に掴みかかってきた。 青井の背中にしがみついていた沙希が 甲高い悲鳴を上げる。 と、女はそこでぐらりと倒れこんだ。 思わず青井が抱きとめる。 「おい!怜奈?大丈夫か!」 「先輩、逃げましょう!」 「いや、こいつのこの様子は普通じゃない」 救急車を呼ぼうと携帯を取り出す。すると女が青井の下で笑い出した。 「足にします。両足。」 その低い声とセリフに戸惑いながら顔を見ると、それはやはり怜奈の顔をしている。 目が合ったと思った瞬間、女は気を失った。
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