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「里穂ちゃん、大丈夫よ。また夏の終わりの大会には出れるから。」
「先輩、でも悔しいです。せっかく仕上げてきてこの前ベストタイム出せたのに」
悔しがる里穂を見ながら、怜奈は少しうらやましかった。
青井のそばにいたいがために始めた陸上部のマネージャー。
里穂のように汗だらけで努力をする女子を見ると、まぶしく感じる。
(私は今まで本気で努力したことがあっただろうか)
たいして努力もせず順風満帆に暮らしてきた怜奈は、ふと、そういう不安を抱いた。
こんな風に頑張る女子からアタックされたら、いかに優しい青井でもそっちに行ってしまうかもしれない。
(里穂ちゃんには負けるかもな。)
里穂の練習量はダントツだ。
平凡な走りだった里穂は、1年かけ、その努力を結果にかえて、タイムを更新し続けている。
「だからこそ、いま無理しちゃだめよ。夏の大会で、もっとタイムあげていきましょう。沙希ちゃんには可哀想だけれど。」
里穂のかわりにリレーを走ることになるのは、種目的におそらく沙希だろう。きっと足をひっぱることになって嫌になってしまうかもしれない。
部活を辞めなきゃいいけどな、と胸のうちで思った。
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