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「ここ最近の生徒会は目に余るものがありましたから。芳さんご自身が、会長を慮って、お調べになったんですよ」
黒崎 望、最近学園に編入してきた高校1年生。
ただそれだけの存在に、名だたる名家の子息が集うこの緋凰学園生徒会が、たった数ヶ月で乱される事があるだろうか。
例えその程度の組織であったとしても、長たる梅原が平静であるなら、追い出す事が出来ないはずがなかったのに。……何故それをしないのか。
生徒の人気で選ばれた役員たちではあるが、学校生活に最も影響を及ぼす組織である以上、一定の能力は当然に持ち合わせており、生徒もそれを期待している。不相応な態度を取り続けられればリコールが起こるし、それを防ぐ術を会長が講じていないのはおかしい。
だから、芳さんは黒崎望のバックに目を向けた。
梅原財閥の御曹司が手を出せない何かが、あの編入生自身ではない所にあるのではないかと。
……まぁ、結果は黒だった訳だ。
九ヶ崎グループと言えば、梅原財閥の有名なライバル社で、戦前から続くと言われるその関係は今でも何かと因縁を付けては小競り合いを繰り返す程度に闇深い。
しかしまさか、ここ最近見つかったらしい社長の息子を差し向けるなどとは思うまい……金持ちのする事は時折、度を越していっそ馬鹿ではないかと思うのだが。
黒崎望、いや 九ヶ崎 望 は、九ヶ崎グループ現社長の愛人の息子、という事になっているらしい。その血縁関係が本当か否か、までは調べられていないが、無月家総出の調査により社長と黒崎が仲良さげに食事をしているシーンや社長宅へと入っていく場面をいくつか激写している。無月家には俺以外にも佳寿様に忠誠を誓っている者が多い為、芳さんには協力的なのだ。いやぁ……佳寿様の布教能力高いんだよなぁ…………という話題は置いておいて。
黒崎と社長との関係の裏付けは無月家が、そして九ヶ崎の企み……即ち梅原財閥の御曹司を学園内で失脚させ、その評価をそのまま世間に公表しようという目論見の部分を芳さんご自身が。ここ数週間かけてきっちり調べ上げたのだ。
勿論、皐月織家当主たる父親から課された成績上位を保つ事も忘れていない。故に、最近の芳さんは誰が見ても明らかに無理をしていた。
それでも、弱音を吐く事なくやり上げたのは、偏に、梅原への情愛を捨てきれなかったからだろう。
あぁ本当に。分かりやすいお方だ。
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