暴走車

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暴走車

 運転中、背後から理由もなくクラクションを浴びせられた。  何かしただろうかと、若干速度を緩めたら、後ろにいた車が真横についた。  いかにもな改造車が横を走っている。見る限り、運転席の男にも助手席の女にも見覚えはない。  速度メーターは四十五キロを少し過ぎた辺りだ。この道の制限速度は五十キロだがら、これでは遅いと感じる人間もいるのだろう。  しかし法定速度の内なのは確実だし、車線は片側二本ある。車通りも少ないから、追い抜きたければ好きにすればいいという状況だ。  なのに隣の車は、無理にこちらに幅寄せをしながら私を煽ってくる。  普通の乗用車を法定速度で走らせていても、こういった類の輩がちょっかいをかけてくるのはままあることだ。  無視を決め込み、後続車がいなかったからさらに速度を落とした。すると隣の車は私の前へと走り込み、急にブレーキを踏んだ。  最初の速度で走っていたら、多分は私は追突事故を起こしていただろう。けれど速度はかなり落としていたし、足はいつでも踏めるよう、アクセルではなくブレーキに近い位置にあった。  傍目から見てもかなり離れた位置で停止する。そんな私を、男女は車から降りもせずじっと見ていたが、からかうことも、当たり屋行為の鴨にすることもできないと悟ったのだろう。すぐに凄まじい速度で彼方へと走り去って行った。  実に迷惑な二人組だ。正直、結構腹も立っている。だから、さっき私が見たものを追いかけてまで教えてやることはないだろう。  
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